第63章
もし人が見ていたら尿意を我慢して家に帰ろうとする姿に見えたかもしれない。少しかがんだ状態でスカートの前すそを抑え、陽子はなんとか足をまっすぐにしながら玄関のドアに向かっていた。
(…まって…すぐそこなんだから…まって…)
足がヌルヌルする。やっと陽子は我が家のドアノブに掴まるまで辿り着いた。郵便受けから取り出した鍵を差し込む。しかしうまく入らない。寒くもないのに手がぶるぶると震えていた。
「…うっ…うううっ…」
悲痛で小さい叫びをあげながら無理やりに押し込んだ。やっとの思いで後ろ手にドアを閉め、鍵を掛けた。
靴も無造作に脱ぎ捨てると陽子はうつぶせにドサッと崩れ落ちた。狭い玄関から中に入るとすぐに台所である。はずみでスカートがめくりあがり、なにもつけてない白桃が露わになった。
(…かえった…帰ってきた…)
…どろっ…どぼっ…
さらに緊張の糸を解いた膣口が淡い茂みから白濁液を排出した。おそらく奥の子宮が溜め込んでいたものだ。流れ出る粘液がフローリングの床に小さな水たまりを作った。
(…昨夜ここ出て行くときはまだ…ああ…わたしいま…こんなにされてしまって帰ってきた…)
何分かそのままで動けずにいた。さっきまでは疲れはないと思っていたがいざ帰ってみると身体中に痺れが浮き上がってきていた。両腕を起こしてそばにある棚に手を掛けやっとのことで身体を起こした。
足だけで立ち上がることができなかった。両手で身体を起こし上げ足を引き寄せる。陽子は棚に掴まりしゃがんだ格好になった。そして勢いをつけて立ち上がろうと息をついたときだった。
「…ふうぅっ…あっ…あぁぁっ…」
…ゴボッゴボッ…ゴパッ…
(…まだっ!…まだ中にっ!…)
…ドボボッ…ドプッ…ジョポッ…
(…出てくる…や…中から…いっぱい…こんなに…こんなにぃ…や…いや…)
部屋の中で一人しゃがみ、陽子は股間から白濁液を床に排出する。いったい何回男は中に出したのか。思えば男は、その欲望のほとばしりのほとんどを陽子の体内に注ぎ入れた。陽子は生まれて初めて男性の精液を身体に浴びたのである。しかも浴びるのが初めての身体に直接内側からこれ以上なく大量に。
(…ま…またあのにおい…)
液体は吐き出されるたびに糸を引きながら床に水たまりを作っていく。
体内で温まった液体が外に出てたちまち強い匂いを放ち、真上にいる陽子の鼻腔を覆う。陽子自身のこれもまた強い匂いと混ざり合って、淫ら以外の何者でもない香りがあたりに漂う。自分が性交をする生物である事を思い知らされるケモノの匂いだった。
(…洗わないと…洗い流さないと…)
ついに立ち上がることはかなわなかった。陽子は四つん這いになりながらバスルームへと向かった。スカートに覆われてはいるがその足の間からは粘液が何度も糸としずくを床に垂らしながら陽子の後を追った。