第55章
「…だめぇっ!…だめよぉっ!…」
緊急事態だった。頭の中でサイレンが大きく鳴っていた。自身を防御しなければならないと身体がぶるぶると震える。
精液をじかに受け入れることなど考えてもいなかった。まさかいくらなんでもこんなことになるとは。この状態になるまで忘れていた自分が信じられなかった。
「…おねがいっ…おねがいだから…それだけはっ…わ…わすれちゃだめっ…ごっ…ゴムっ…ゴムっ…つけてっ…つけてっ…」
しかし思考以外に変化はなかった。膣はあいかわらずペニスにまとわりついて蠢いている。せっかく戻った意識がそっちに引っ張られるのをなんとか押しとどめていた。
「…うっ…ううっ…わ…わかった…そうだね…」
「…ああっ…おねがいっ…」
「…つけるよ…コンドーム…そこにある…から…」
意外と素直な同意に安堵感が広がった。サイレンが遠のいていく。いうことを聞いてくれると言ったのが嘘ではなかったことに陽子の表情が緩んだ。
「…お願いだヨウコ…もうちょっとこのままで…我慢するから…」
「…はや…く…おねがい…」
「…きもち…いいんだ…ヨウコのオマンコが…チンポ…くわえて…はなさないんだ…」
「…ああっ…くううんん…」
わかっている。よくわかっている。自分の身体が自分の意思を離れて勝手に快楽をむさぼろうと行動している。挿入された亀頭だけを文字通りおいしそうにしゃぶっていた。
それでも陽子は必死に懇願しなければならない。目が助けを求めていた。
「…ヨウコ…そんなにオマンコでチンポしゃぶったら…僕、さっきに負けないくらいいっぱい…精液…でそう…」
「…だめっ…だめぇっ…あああっ…はや…く…」
「…もし、コンドームつけなかったら…ザーメン…ドピュドピュッてオマンコの奥まで届いて…」
「…う…う…うあああっ!!…」
「…オマンコの中、マン汁とザーメンでいっぱいになる…」
「…いや…あっ…は…や…く…」
意識を奪い取られそうになるのを必死でこらえていた。膣口がキュキュッとしまる。亀頭のくびれを締め上げながら、その隙間からドプドプと愛液が噴き出した。
「…たぶん、それでも止まらない…さっき喉の奥に感じたろ…勢いよくビュッビュッて叩きつけられる感じ…ね…たとえ離れてても熱い精液だけは深いところまで届いていくんだ…それがオマンコの奥に…おんなじように…何度でもザーメン飛び出すよ…いっぱいのザーメンが何回も…なんかいも…奥の奥まで…ビュッビュッ…ビュッって…」
「…ああああっ!!!!!…あぅえいいいっ!!!…」
振りほどくように頭が大きく振られた。思考と身体の反応が大きな格差を生じさせていた。奥の奥で子宮口がわなないている。そのとおりさっき喉奥にたたきつけられたあの感触が子宮の入り口に転送されていた。
身体が想像している。中で勢いよく跳ね回る熱い粘液を、奥底に噴射されるほとばしりを。そして身体は自らの意識下にその感触を定着させていく。
陽子は身体の意思が良識の意識へ侵蝕してくるのを防ぐのに懸命だった。膣は餌を求める鯉の口のようにパクパクと、ニュグニュグと蠢いている。
(…からだがっ…からだがっ!!…いうこときかないぃっ!!!…)
ダムは決壊しようとしていた。欲望の渦が理性を覆い尽くそうとしていた。
「…だめ…だ…め…だめ…」
(…だめ…だめっ…おくまで…だめ…もっと…なかにっ!…なかまでっ!…もっと…だ…め…おくまでえ…)