第48章
バスルームの中が無音になった。陽子の息遣いだけが残っている。
「…はあ…はあ…はあ…はあ…」
「…スッキリした?…ヨウコ…」
「…はあ…はあ…はあ…はあ…」
振り向く気力もなかった。トロンとした目で鏡の中の自分をぼんやりと見つめていた。思考力が完全に止まっていた。
「…汚しちゃったね…ヨウコ…」
「…はあ…はあ…はあ…」
「…こんなにたまってたんだね…スッキリしただろ…」
「……はあ……はあ……」
武史はビデオカメラのスイッチを切るとシャワーから勢いよくお湯を出し、排水溝の蓋を開けて汚物をきれいに流し去った。
「…ほどくよ…」
武史は陽子の前に立つと足のロープを解いていった。ずるずると力なく足は下に降りていった。ぶつからないように武史はそっと足を抱えて丁寧に地面に降ろしてやった。胸の拘束も解き、後ろに回って両手のロープも解いた。
「危ないヨウコ…」
椅子から自由になった身体がずるずると前へ落ちていくのを、武史は急いで抱きとめた。
「…かわいかったよ…ヨウコ…さあ、お風呂に入ろう…」
武史はそのまま陽子を抱きかかえると湯船に入っていった。
「…滑らないように気をつけて…」
武史は後ろから陽子を抱きかかえるようにして湯船に一緒につかった。
(…あったかい…)
排泄により体温が落ちていた陽子に、お湯の温かさが染み渡っていく。背中を武史に預けながら身体のこわばった軋みが和らいでいくのを感じていた。
武史はタオルを湯に浸すと陽子の前で絞り、顔をやさしく拭いてやった。
(…ああ…やっと…)
白い液体の仮面が徐々に取れていく。ゆっくりとやさしく丁寧にタオルが顔の汚れを拭い取った。
やがて拭き取り終えてタオルが顔を離れた。赤いタオルの全面にネバネバした精液が糸を引いてところどころ白く浮かび上がっていた。
(…こんなに…ああ…)
タオルがまた湯に沈み絞られた。もう一度陽子の顔をきれいにした。湯船に白い固まりがいくつか泳いだ。
「…はああ…」
「…あったまってきた?…」
「…」
体重を武史に預けながら、陽子は体力が戻ってくるのを感じていた。手足の硬直に血液が流れ込み感覚が戻ってくる。呼吸がだんだんゆっくりと深くなっていった。
うつろな目を左に向けると鏡の前にまだ椅子はある。あそこでたったいま、自分がどういう状況にあったのか記憶が蘇ってきた。だんだんと意識が覚醒しつつあった。
「…あ…あ…」
うろたえた陽子の息が浅くなる。
「…そう…ヨウコはあそこに縛られてたよね…」
「…あ…う…」
武史が耳元で囁く。
「…あそこで股を開いてウンチ撒き散らしてたんだ…」
「…あ…やっ…」
喧騒が蘇ってくる。今は静かなバスルームだが陽子の耳には聞こえていた。
(「…ああっ!…ようこ…ウン…チ…しまっ…すっ…ああっ!…」)
((…ビビッ!…ブリッ!…ブバッ!…))
目の前の幻が大声を上げながら失禁し続けている。横を向いてる尻から次々に汚塊が飛び出し、床に鏡にぶち当たっていく。
悪夢のような姿がさっき実際にあったのだと息が荒くなる。
「…ふっ…んっ…ふっ…うっ…ふふっ…」
「…すごい音だして…いっぱいのウンチ…すっごい匂いで…」
(「いやっ!いやっ!みないでっ!…みないでっ!…」)
((…ブ…ブ…ブピィィッ!…ボバッ!…ブシャッ!…))
「…あぐっ…ふっ…ううっ…」
陽子は両手を上げ、ふちにつけた。身体を起こして湯船から出ようとした。急いで逃げ出さねばならなかった。
(…おかしい…気が狂ってる…でなきゃ…この場所から出なきゃ…この男から…逃げなきゃ…)
武史の手が陽子を追う。両手が掴まれ、腰の後ろにまわされた。湯がザバザバとうなる。
「…あっ…う…」
手が上に戻せなくなった。リングで両手枷がつなぎとめられた。
「…いっ…いっ…」
陽子の身体が湯船の中でジャバジャバと暴れる。
武史が陽子の身体を左に傾けた。お尻が片方浮き上がった。
「ここだヨウコ…」
「ヒッ!…」
武史の指が陽子の肛門をいきなり捕らえる。
「…まだ誰も見たことないヨウコを…僕は見せてもらったよ…ここからヨウコがウンチいっぱいひりだすのを…」
「…ひっ…ひっ…」
身体が押さえつけられて戻せない。指は優しく肛門を揉みほぐした。
「…ヨウコの匂いで僕もほら…」
陽子の手に武史の武史の塊が触れてくる。
「!!…」
(…かたい…はちきれそうになってる…)
「…に…にぎって…ヨウコ…」
陽子は反射的に両手をぱっと広げた。それでも武史は腰を動かしてペニスを陽子にこすりつけてくる。
武史は背中から覆い被さるように陽子を押さえつけていた。右手で肛門を弄び、左手は前に回して胸をまさぐり始めた。そして吸い付くようなうなじに舌を這わせる。
「…んぶっ…んまっ…はっ…」
「…あっ…やっやっ…」
「…ん…うんん……もう残ってない?…ウンチ全部出した?…」
排泄で敏感になったアナルが揉み解される。指が中に入ろうとグリグリまさぐる。
「…ううっ…うううっ…」
ザバザバと湯が揺れ、暴れるからだが湯船でこすれて、にぶい音を立てた。
「…ヨウコの顔、僕のザーメンまみれになって…もっとザーメンほしいって…チンポしゃぶって…」
「…そっ…それはっ…うっ…」
武史の手で身体が左に傾けられた。右足が中で暴れる。武史の右足がその陽子の右ひざに巻きついた。
「…ここも洗わなきゃね…」
武史の胸を弄ぶ右手が股間へ降りてくる。広い範囲でヌルヌルに覆われているのがお互いにわかった。指にその粘液を湯の中でまぶしている。
…ズヌヌッ…
「あああっ!…」
中指が一気に入ってきた。根元まで入って中で細かく振動する。
「…あうっ…うっ…」
後ろの手のひらが閉じた。武史の腰が動いて手の中をペニスが前後する。
「…う…ああ…しっかり洗ってあげる……」
肛門の入口を揉み解されながら、うなじがベロベロと舐め回される。粘液を外に追い出そうと膣の指が手招きをしながら出し入れを繰り返した。
「…ああ…やあっ…」
「…オマンコんなか、洗ってあげるよ…ヨウコ…」
「…くあうっ…あうっ…」
腰が湯船の中でビクビクと震えた。奥にある火種が消えてなかったばかりか、また炎を広げ始めていた。
伸びた右足が湯船向かい側の壁に突っ張り二人の腰がズズッとすこし後ろへずれた。
武史の指の動きにあわせ、身体が震える。そして陽子の腰はだんだんと動きだした。
「…ううっ…くうっ…うあっ…」
「…ぜんぜん落ちないよ…オマンコからどんどん出てくる…」
「…やああ…そんなことされたら…あああ…」
背中にペニスの先が当たるのを感じる。ヌルヌルしたものがなすりつけられていた。
(…ここで出させてしまえば…)
男性は一度放出すればその性欲が治まることは、陽子も承知していた。事後に再度身体を求められた経験は陽子にはなかった。
「…あうっ…あううっ…」
懸命に考えていた。性交なしでお互いの性器を愛撫しあうことなど論外だったが、今までの異常すぎる行為を考えるとなりふりなどかまっていられなかった。
(…出させてしまえば…終わるだろう…)
陽子は手を激しく動かし、覆い被さる獣のペニスを静めようとした。
「…あっ…ああ…ヨウコ…そんなにしたら…」
「…やはあっ…あああっ…」
(…イッて…早く出して…)
「…また…でちゃうよ…」
「…ああっ!…そんなに…かきまわさないでえ…」
(…イッて…イッてぇ…背中に出して…)
二人の腰が激しく揺れ、お湯がザップザップと波打っていた。
「…しょ…しょうがないな…」
「…あああっ!…だめっ!…」
武史は腰を離し、指も陽子から抜いて両手を離した。陽子の手が武史を追い求めてさまよった。
(…ああ…ああ…もう少しで…)
「…もう少しでイッちゃうとこだったよ…」
しかしまだ陽子の腰は動いている。なにもないところをさまようように律動していた。
(…ああ…なんで…なんで…とまって…)
「…まだ疼いてしょうがないんだよね…ヨウコ…」
「…ちがっ…ちがうぅっ…」
武史は陽子の股間回りのぬめりを撫で回し取ってやりながら言った。陽子の腰の動きも徐々に治まっていった。
「…チンポ欲しくてしょうがないんだよね…ヨウコは…チンポの…どれい…だもんね…」
「…やっ…ちがうっ…」
「…さっきヨウコ言ったよ…ザーメン奴隷になるって…」
「…あっ…あれはっ……わたし…そんな…」
「さっ…あがろう…ヨウコ…」
武史は陽子を抱き上げると湯船から出た。両手は後ろに拘束されたままだった。バスルームを出てバスタオルで二人の体を拭いた。陽子の目は武史のペニスに釘付けだった。
(…あれを…静かにさせれば…終わる…)
しゃがんで陽子の体を拭く武史の股間を見つめながら、陽子は室内の冷たい外気を感じていた。思わず深呼吸をしようと息を吸い込んだときにそれは脳を直撃した。
(!!!…)
精液の匂いだった。鼻の中はさすがに洗えていなかった。武史の精液の匂いが強烈に鼻腔を刺激する。口の中にも味がまだ残っていた。
すぐ前でしゃがんで上を向いてるピンクの亀頭から、陽子めがけて大量に何度も射出される精液の映像が頭の中で生成された。
「…あっ…あうっ…」
陽子がビクッと腰を引いた。ちょうど股間を拭いていた武史の目に、離したバスタオルから伸びる粘液の糸が映った。
武史は再び陽子を抱きかかえ、ベッドに戻って陽子を寝かせた。バスルームに戻り椅子とビデオカメラを取ってくると、またたんすの上に仕掛けた。
「…一緒にとろけよう…ヨウコ…」
ギシと音をたて全裸の二人は広いベッドに横たわった。