第37章
武史は陽子の身体をベッドの真ん中にそっとやさしく横たえた。頭をちゃんと枕に寝かせてやった。
顔から悲しみは消え、また夢を見てるようなさっきのいやらしく陽子を見つめる陵辱者の顔に戻っていた。
「僕のものになるんだ…ヨウコ…」
(ああ…ここで…わたし…)
「お願い…シャワー…」
「陽子がここに来るまでに僕は済ませたから…」
「…わたし…わたしも…」
「ヨウコはそのままでいいよ…ヨウコの感じてる匂いを嗅ぎたいんだ…」
「…い…いやっ…」
「欲情したヨウコが出した汁も汗もいやらしい匂いがする…部屋中いっぱいに嗅がせて…」
「…やっ…そんなの…いやぁ…」
汗臭いはずの自分の匂いを感じて陽子の奥がまた熱く燃え始めた。
陽子は右横に身体を寝返らせて、両手で胸と股間を隠そうとひざをすこし曲げて横たわっていた。目の前でベッドの傍らに武史が立っていた。陽子の後ろのほうを何か探しているようだった。パンツのテントはすこし小さくなっていたが、シミがところどころに点々と浮き出ていた。
「ああっ…」
目をそらして上を見上げると見慣れないものが目に入った。ベッドに横たわったとしてその頭上に、つまりティッシュボックスが置かれている壁の上に照明が突き出ている。それはひとつではなくふたつあるようで、ベッドのちょうど端の延長線位置にある片方を陽子は見ていた。照明がふたつあるくらいはおかしいものではなかった。おかしなのはその照明を支えるL字型の金具に巻きついたロープだった。そこから50CMほど伸びたロープの先に銀色の大きなリングが結ばれていた。
武史がそのリングを手にするとベッドに上がってきた。陽子の左腕を掴んだ。
「い…いやっ…」
武史がなにをしようとしているか陽子にもわかった。
「…やっ…やっ…」
身体を固くしている陽子の左腕を引っ張って手枷のクリップをリングにかちゃりと着けた。
陽子は左手を吊るされて片手だけのバンザイをしてる格好になった。
天井に大きな鏡があった。片手をペットのように繋がれた自分が映っていた。陽子は自由な手を添え、拘束をはずそうとした。あせってロープを引っ張りながらはずそうとするのでなかなか思うようにいかない。
「…あっ…あっ…」
鏡の中の武史が反対側の照明のほうにベッドを這って行った。陽子は首だけを後ろ側に向けそちらのほうを見た。その照明にも同じようにロープが吊るされていた。しかし武史はそのロープを手繰ってはいなかった。かがんで何かいじっていた。
武史が後ろを向いたままベッドの反対側へ降りた。横壁には高さのある簡単なウェアボックスがあった。足元に全木製の軽そうな肘掛け椅子がある。
武史がつるつるした椅子の上に立って手を伸ばしボックスと天井の間にそれを置いた。
「!!!!!!!!…」
ビデオカメラだった。レンズがこちらを向いていた。