第3章



「もしもし」

「……あの…伝言聞いたんですけど…」

「あ?ああ、はいはい。はじめまして」

「…」

「伝言聞いてくれたんだよね。ありがとううれしいよ。どこに住んでるの?」

「あの…A市です。…」

「あはっ、じゃあ近くだね。いまヒマ?」

「あ、はい…ゴハン食べに行こうかなって…」

「あ、そう。僕もこれからなんだ。一緒に食べない?」

「え?あの…」

「ん?」

「はじめてだし…ちょっと」

「そう?まあいいじゃない。独りで行くんでしょ。」

「ええ」

「二人だったら楽しいと思うよ」

「そう…ですね」

「じゃあ○×のファミレスで7時に。場所わかる?僕は緑色のバッグ持ってるから。君の目印は?」

「…白のカーディガンに赤いミニスカート…」

「そ、僕の名前はタケシ。君は?」

「……ヨウコ……」

「ヨウコだね。楽しみに待ってるから」

「……はい…」

どうしよう。電話を切ってから陽子は考えた。相手が屈託なく話すもんだからつい、本当のことをしゃべってしまった。
でもこちらのことはそれしかわからないはずだ。いざとなれば知らぬふりを決め込んでしまえばいい。




陽子は外に出た。なにを食べようか迷っていたがそれは自分へのごまかしでいつのまにかその待ち合わせ場所の近くにきていた。
前を行ったりきたりしていた。

(どうしようかな…)

とにかく誰かと一緒にいたい気持ちは変わらない。ごはんをたべるだけにしてもいいんだし。まずは遠くから探してもいいし。

陽子はドアを開けた。

「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」この言葉で陽子はまた悲しくなった。はい、一人ですとは言いたくなかった。

「いえ、連れがきてますので。」

「では、お進みくださーい」



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