第171章


外に負けじとだだっ広い店内だった。武史はぶらぶらと店内を歩き回った。ここには薬関係だけでなくありとあらゆる雑貨類も揃っている。アダルト通販で買ったエネマシリンジをここで見たとき、その値段の安さに驚いたことがきっかけだった。グリセリンの大瓶が秘密裏でなくそれも安価に堂々と個人で買えることを知ったのもここだ。冷静に考えるとバイブなどあからさまなものを除いて、アダルトショップでわざわざ買う必要がなく代用できるものが普通に売られてることを知ったときにはドキドキしたものである。本来の目的で使うかどうかなど本人の勝手なのだ。要は工夫次第である。

武史は棚を眺めながらときどき立ち止まるのを何度も繰り返した。ありとあらゆるものが卑猥な遊戯のための用途に結びついた。

(…狂ったんだな俺…)

これを使えばどんな声を挙げるだろう、どんな恥ずかしい顔をするだろう、それのみを考えていた。歯ブラシのコーナーでさえ足が止まった。"やわらかめ""かため"の文字が想像を掻き立てる。しかし首を振った。いくら柔らかくても歯ブラシだ、磨くためなんだからいくらなんでも硬いだろう。大体列二つ向こうには筆や刷毛がずらり並んでるコーナーがあるのだ。

また立ち止まったのは睡眠のためのアイマスクだった。とりあえず取るには取ったが使うことはないように思えた。が、とりあえずカゴに。しかしこれを見たとき、武史は自分が本当になにを望んでるかを自覚した。

(忘れられなくするんだ…)

時間がない。機会は少ないのにやってないことがまだまだある。

(…一生…他の誰にも絶対できないことで…一生…誰かと結婚しても…一生頭ん中に…)

悪魔の計画が次々に現れ、試行錯誤の繰り返しの後さらにより濃密な案が生まれる。カゴの品物は増えていった。

そしてまたある品物に目がとまったとき、それまで何度も繰り返した計画の全体が崩れ落ち、また速攻で積みあがりさらに高い塔の像を成した。

(に…人間でなくなる…)

日用品を揃える店で自分はなにをしてるのか。周りが全く見えてないことに気づいた。世界はなにも変わらずそのままなのに自分だけが狂気にどっぷりはまっている。
しかし武史は迷いもせずそれを手に取った。天まで届かんとばかりに構築した妄想の塔はもはや自分でも崩すことができなかった。

(正真正銘の変態だ…こんなこと考えるなんて…俺もう人間でないんだ…)

そして武史はレジに向かった。カゴを前に持ちベルトのバックルを抑えてるのは、はちきれそうに固くなっている部位を隠すためだった。


ドラッグストアだけでは計画の準備は整わない。駐車場から車を出すとまた武史は帰り道と反対方向にハンドルを切った。





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