第99章
…かちゃ…がちゃがちゃ…
「…くっ…」
男に落ち着いた雰囲気はなく、もどかしそうにベルトのバックルをまさぐりボタンをはずすのにも手間取っていた。腰を引いてボタンをはずした男はジッパーを下げながら再度つぶやいた。
「…口あけろ…」
「…ぐっ…」
聞いたことのない口調だった。夢中でそれしか頭にないというふうにつぶやいたからだ。陽子は泣きそうな顔で口を真一文字に結んだ。
しかしジッパーをおろした途端にほのかな臭気が立ち込めた。当然初めてのものではない。男性の匂い、いや最近知ったこの男特有の"性"の匂いだった。
すぐさま男は躊躇なくトランクスをはだけた。予想以上に一気にその匂いは強烈なものになった。
そしてまた目が釘付けになる。この前見たものとは少し形が違っていた。包皮がめくりきれてない。皮のきわに白いものが付着していた。それがなにか陽子は知らない。しかし一段と匂いが強いのは、これが原因だということは本能的にわかった。
すぐに陽子の泣きそうな表情が緩んだ。本能なのか学習した条件反射なのかは誰にもわからない。瞬間的に完全に匂いに酔った。すぅっと全身から力が抜け、掴まれた手がすぐにかくんと垂れた。
鼻先に亀頭がちょんと付いた。匂いになにがなんだかわけがわからなくなった。
「…くち…」
すでに堅く閉じたはずの口も脱力していた。ほんの少し唇が開く。亀頭が滑り降り、ゆっくりとその唇を割り開いてきた。
「…ん…んぉぅ…」