第9章
武史は擦らないようにティッシュを押し当て陽子のぬめりを吸い取っていた。
「…エッ…ヒック…」
(終わった…終わったんだ…やっと…)
(ほどいてもらって、なんとかむしゃぶりついても写真を消そう…カードを抜き取るだけでもいいんだから…)
陽子は武史を見た。
拭い取り終わった武史は陽子を見つめながらそのティッシュを鼻に当てていた。
やさしく陽子は言った。
「もう気が済んだでしょ。足を降ろして。ほどいて…誰にも言わないから…」
鼻にティッシュをあてながら武史は言った。
「カメラで撮っただけだよ。まだよく見せてもらってない。」
武史は顔のすぐ横にある陽子の足に軽いキスをして笑った…。
「そんな…じゃあ…シテも…いいから…早く…済ませて…我慢してるから…」
「我慢することはないよ、ヨウコ。」
武史はペンライトを取った。それを右手に持ち左肩に陽子の足を担いだまま武史はしゃがんだ。ペンライトの先は陽子のへそからだんだんと下降していった。
「いや…やめて…そんな…こ…と…」
陽子にも武史が何をしようとしているのかわかった。
武史の視線はライトの先と陽子の顔を忙しく行き来していた。
「毛は薄いんだね。ポヨポヨって。大事なところこれじゃ隠れないね。」
「あ…あ…」
「そしてここが…」
「ひっ…」
「きれいに拭き取れてるよ」
「…」
「…へええ…」
「…」
「…」
「いっ…やっ!」
ドプッ…
(まただ…いう事聞いて…私の身体…どうしちゃったの…わたし…)
「あっ!あぅっ!」
ドップッ…
「せっかくきれいにしたのに…ヨウコ、はしたないなあ…もういっぱいで下に垂れ始めてるよ…」
「ウウッ…アウウッ…」
「…よく見えないな…」
武史は足を担ぎ上げたまま、車の前方に手を伸ばし助手席ドアに巻きついたロープをほどいた。
(ホッ…あとは手錠…)
次に武史は陽子の背中へ左手を伸ばした。
(手錠はずして…)
しかし武史が戻した左手にはもう一本のロープがあった。武史が引っ張るとロープはピンと張った。その方向から陽子はその端が、背中にあるシートベルトの天井近くの金具にあることを悟った。実際向かい側前方に同じようにロープの通せるところがあった。武史は手にしたそれを担いでいる陽子の右ひざに巻いていった。結び終えると武史は両手で陽子の背中に手をまわして抱き上げ、今度は車の前方に陽子の頭が来るように仰向けに寝かせていった。なぜか腰がシートに降りなかった。陽子は武史の目前にある大事なところをこれ以上見られないようにと左足も武史の肩に乗せるしかなかった。武史は陽子の頭の下に小さなクッションを挟み込んだ。これで陽子が頭をのけぞらせることはできない。陽子は自分の体勢がどういう状況に陥ってるのか、いやがおうにも一目で把握させられた。視界の中心には武史の顔が、そしてそのすぐ下にいつも目にしている、見慣れた茂みがあった。
新しいロープは短かった。10CMもなかった。陽子の右ひざは高く宙に浮いたままになった。武史が担ぎ上げた左肩をずらしのけたとき陽子はそれに気づいた。
(なに?…落ちない!…降ろせない!…)
武史は陽子から体を離した。陽子は久振りと思えるほど両足を閉じ合わせた。降ろせない右足に腰の浮いたまま添え、お尻も曲がり落ちた足先でみえないように隠した。
その向こうから武史が左に動いた。手にまたしてもロープを握っていた。