第81章


陽子も突然の事に口をあけたまま、まばたきもできなかった。
二人はしばらく驚愕の表情で無言のまま見つめ合った。ビデオの絶叫だけが部屋に空しく響いた。


武史のほうとしては別に悪気があったわけではない。今回の訪問はあくまで薬の副作用を心配したからだ。無事を確認するだけで帰るつもりだった。しかし入口まで来たとき、かすかに喘ぎ声のようなものが聞こえたのだ。あとから考えればおそらくはビデオのものだったのだろう。なんとなく音を立ててはいけないような気がして、チャイムを鳴らさずに窓に手を掛けたのである。幸いというか、その小さな窓には鍵が掛かっていなかった。
それを見たときには正直驚いた。こちらの気配に気づくことなく、下半身裸の陽子がビデオに夢中になっていたのである。正直武史は、作っていいものかどうか迷いながらこのビデオを編集した。しかし編集しているうちに嗜虐心が良心を打ち負かしてしまったのである。いつのまにか次に会う口実のために作っていて、あの夜確かに陽子も感じていたことを思い知らせるために編集したつもりだったが、まさか届けてすぐに観て、しかもよもやこんな光景に出くわすとは予想だにしていなかったのだ。


しかしそれにしてもこの姿である。いまここで陽子は、他でもないこの自分との交わいを鑑賞しながら自慰に耽った。武史は唖然としながらも胸の中に満足感のようなものがこみ上げていた。呆然とする陽子の唇が半開きなのが艶かしい。小さく見える濡れた舌に目が吸い寄せられた。その下でごくんと喉が動いているのが遠くに見えた。

間違っていない。

無言のまま武史は窓を閉めると武史は深呼吸をしながら、大きな支配感を感じた。自分でも信じられないほど、状況は予想を大きく上回っている。
いままで自分のしてきたことが功を奏しているのだ。陽子はこの自分を求めている。自信と満足感にめまいを覚えた。
そしてめまいと恍惚感の中で、嗜虐心が嵐のように慈愛を埋め尽くし、隠していくのを覚えた。

思い通りになる。陽子は自分の思うようにどうにでもできるのかもしれない。しかし…

輝かしい将来に向かうこともできる陽子に、自分のようなものが関わってしまって良いのかと、心の隅に罪悪感が重くくすぶるのも事実だった。しかしながら、実際いま武史は陽子のことしか考えられない。なににもまして独占欲がまさっていた。そして武史は、自身がいびつな性的嗜好の持ち主だということをよく知っている。

いまは他の事は考えられなかった。どうやって陽子を弄ぶか、いかにして同じような性愛嗜好を持つ同志に変貌させてやるか、そればかりを考えていた。意思に関係なく、着々とシナリオが瞬時に積み重ねられていった。

部屋には入らず武史は階段を降りた。広い駐車場にぽつんと駐めたワゴン車からセカンドバッグを取り出した。




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