第5章


30分ほどすると信号が少なくなってきた。武史は先ほどのことは嘘だったかのように最初あったころの話し好きの男になっていた。陽子は話を半分聞き流しながら適当に相槌を打っていた。頭の中は別のところにあった。

そのうち車はY字路を左に入って本道から逸れ、200メートルほどカーブの続いた緩やかな坂道を登るとワゴンは道端に停車した。小山に囲まれたところでここからはちょうどあたりの民家も見えず、向かう遠くの道路照明でお互いの表情はかろうじて見えるが総じてあたりは暗く3分に1台ぐらいの通行する車のライトしか二人を照らすものはなかった。
Y字路に入ったころから武史は世間話をやめていた。静かな沈黙が流れた。武史は二人のシートベルトをはずした。シュルッと音をたて体を固定するベルトは元の位置に戻っていった。

「パンツを脱いで…」

しばらく無言でいた武史が陽子の目を静かに見つめながらボソッと言った。
陽子の体が固まった。

「え?こ…こ…で?」

移動中、陽子は考えていた。

(この後ホテルに連れ込まれるんだろう。その…一回…サセてあげれば…男の人は…気が済むから、そのあと頼み込んで写真を消してもらえるかもしれない。一回限りの我慢で済ませることができるかも。いや、そうしなければ。)

今のところ考えられる限りの妥協策だった。
陽子は今まで(聡とだけだったが)、今までの経験から、SEXは男が自分の上で腰を動かし勝手にひとりで果てるものと知っていた。布団から首だけ出しながら聡は性器を手でのみ愛撫し、少しの滴りを確認するとすぐ挿入に入っていた。陽子は長くても一分ほどの外敵からの痛みを我慢するだけでよかった。目の前にいるこの男だって例外ではないはずだった。

(気の迷いとはいえあんな伝言になんか手を出してしまった報いなんだ。我慢しよう。ホテルの部屋に入るまでに気を落ち着かせよう。)

しかし、事態は予想を越えて早かった。

「オモラシしたみたいになってるんだろ。気持ち悪いだろう。脱ぐんだ。」

「そ、そんなに…なってないです!」

陽子は武史をキッと睨み返した。

「脱げ」

「…」

「写真…」

「!」

一転して泣き顔になった。

(ちょっとの…ちょっとの我慢よ)

陽子はスカートをたくし上げないように気を払いながらそろそろとパンツを降ろした。

「こっちによこせ」

「…」

下着を右に差し出した瞬間、後方から車が通り過ぎた。一瞬の光が手のなかできらりと反射した。

(濡れてる!)

おもわず両足がさらに固く閉じた。
とっさに引っ込めようとした左手を武史が掴んだ。
あっという間だった。武史は下着を奪い取り、同時に陽子の上体を前倒しにして後ろから両手を取った。陽子はカチッ、キリリという音を聞いた。手錠だった。

「なっなにするの?…ヤッイヤッ」

大声で叫んだつもりだった。車のそばにいれば誰か気づいただろう。しかし声は人通りのない夜の道端でかすかに空しく響きやがて闇に包まれた。



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