第2章
昼食も取らずに陽子はベッドに入って眠りに落ちた。
目が覚めたのは午後5時。
こんな不規則な生活は何年ぶりだ。今夜眠れるだろうか。明日からまた職安通いが始まるのに。陽子は今の会社には中途採用で入った。
(前の会社を辞めたときはこんなじゃなかったな。)
空腹を感じ考えるのを辞めた。なにも作る気はしなかった。今日は外で食べよう。独りで。
着替えの途中で朝に置き去りにした雑誌が目に入った。
今朝のことが一挙によみがえった。
(バカなことを…)
(でもとりあえず…)
陽子は電話を取りダイヤルした。
「8件の伝言が入っています」
驚いた。(一日でこんなに…)
「再生します」
しかしすぐに陽子はなにかようすが変であるのに気づいた。
「はあはあはあ、僕のチンポをしゃぶらせてあげようか?君の…」
「君のアナルを…」
「そんなに寂しいんだったらみんなで輪姦してあげる…」
次々に再生されるSEXしか頭にないような伝言。しかも普通のものじゃない。心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。陽子は電話を切ろうとしたが好奇心がそうさせなかった。
すると、
「はじめまして。寂しいのはお互い様。僕も君と同じような状態なんだ。仲良くしようよ。経験はあるから。まずは会ってみない?電話は030…」
まともな伝言だ。私と同じような人がいる。この人だけ他と違う人なんだ。振られた経験もあるって言うからこの気持ちわかってくれるかも。こういう人もいるんだ。へー。
次からの伝言を聞くとまた変態的なものばかりだった。
(相手にしなければいいんだ、でもこんないやらしいこと聞く人いるのかな。男って…)
最後まで伝言を聞くと陽子は電話を切った。
(あれ?)
立ち上がってパンツを脱ぐと股間にシミができていた。そのシミは少し降ろしたパンツに糸を引いている。
(やだ、わたし…)
ティッシュを抜き取り刺激を与えないようにその部分に押し当てて湿りを取った。
(なに考えてんのよ…)
(ま、いいか)気を取り直して陽子は外行きに着替えた。しかし外に出ようとドアノブに手をかけたところで立ち止まった。
(独り…外で食事…独りなんだよね…)
決心を決めて部屋へ戻った。先ほどの伝言をまた聞き返した。次々に飛ばしさっきのいやらしくない伝言を聞いて番号を控えた。深呼吸をして忘れずに"184"と入れてからその番号をダイヤルした。呼び出し音の倍の速さで心臓が踊っていた。
パンツは穿き替えていなかった。
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