第155章


陽子がそうなったと同じ頃、武史もその理性を失いつつあった。
二人は下半身のみに意識を奪われ、お互いに性器と化している。しかしながらどちらも挿入でSEXをしている、という感覚がなかった。どこが境目かもわからない。自分がどこまでで相手がどこからなのかもわからなくなっていた。すべてがひとつになっていた。


「…ウグ…」


陽子の唇はつむじを中心にすっぽりと覆い、だらしなく舌を這わせた。武史が胸の中でそれを察知したとき、股間にじわぁっと温かいものが広がっていくのを感じた。


「―――――っ…」


陽子は失禁していた。これまでときどきあった断続的な分泌と違い、小水は武史の内腿まで広がっていった。同時にそれは膣内でも同じようなことがおこった。小水とは明らかに違うヌルヌルした愛液がどぼっとペニスの根元縁から溢れ出し、睾丸を包みこんだ。


「――――――――っ…」


もう二人共に感覚がなかった。全身が温かい海に包まれ上下の感覚も消えうせた。
愛液が飛び出たのは膣が緩んだからではなかった。中が急速に狭くなったのだ。


…ぎゅぅぅぅ…


(…!っ…!!っ…)


途端にペニスに強い圧迫がかかった。内壁が盛り上がってペニス全体を締め付けてくる。いままでの柔らかさから突然膣内が一変した。


…ぞろり…


(…!!ッ…)


そして中が動いた。盛り上がった壁が上に動いたのだ。武史は甘い危機感のような戦慄を覚えた。


…ぎにゅ…ぞろ…


(…!ッ…!!ッ…)


また膣内は締めながら上に動いた。武史は胸の中で大きな口を開いて陽子につかまった。そう、抱きしめるのではなくすがりついた。手の位置が少し下がったのは、必死な思いで不安定な体勢を立て直すためだった。わずかに動いただけで重心は武史の尻に移動した。これで陽子にかかっていた負担はほとんどなくなった。
二人とも泣きそうな顔で絶叫していた。人間には出せないはずの超音波を発してるような表情だ。


カメラの電源は入っていない。だがこちらを向いたレンズに像は反射していた。
月明かりの逆光にひとつのかたまりと化した二人が悩ましい彫像の影となって聳えている。
そして男に乗っかった尻はわずかながら動いている。震えているのではない。陽子の尻たぶには、えくぼが現れては消えるのを繰り返していた。







目次へ     続く

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