第153章


…ぽたっ…


忘れていた一滴が洗面器に波紋を立てた。外見からは二人は全く微動だにしていない。しかしよく見ると双方とも確かに呼吸をしており、特に女のほうは深い息と浅い息を不定期に交代させながら、ときどき押し殺したようなうめき声をたてている。
静かな夜の中で一組の男女が、ただ一点のみに全意識を奪われ、集中させている最中だった。


…にゅぐ…にゅぐ…


(…ゥア…ァ…ァ…ア…)


陽子は完全に体重を預けている。そして男が全く動かなければ、ピストン運動などの外的な力による動きも皆無だ。陽子自身もおぼろげな意識で気が付いていた。結合部分になにかが集まっていく。まるでペニスのサイズに自分が合わせていくようになにかが…なにかが…降りていく。


…にゅぐ………ぐ………に……


「…ウヴウウーーーーー…」


二人は同時に、その集積が限界を告げた瞬間を知った。ペニスの先が壁に突き当たったからだ。陽子は、誰も聞いたことがないくぐもった低音の獣のような唸りを挙げた。
子宮口が亀頭に届いたのである。


「…ヴヴグゥゥーーー…」


その、理性がつかさどるものとは思えない咆哮に武史は戦慄を覚えた。なにかが起こりそうな気はしていたが、なにが起こっているのかわからなかった。武史は陽子の胸の中でぱちりと眼を開けた。もちろん視界はゼロ、しかし眼球の前に月明かりがわずかに差し込み陽子の淡色の肌が見えた。にじみ出た汗が角質を伝う。そして少し上に見える鎖骨が…呼吸をしていた。いや、全体が…迫っていた。

また頭髪の中に暖かい息が浴びせられた。武史は甘美なめまいを感じた。


…ゴクッ…


そして陽子が喉を鳴らしたときだ。目の前の覆いかぶさる身体が合わせて波打った。その動きと大きな音は完全に武史を威嚇した。

少しだけ仰け反りぎみなだけといっても、武史のほうからすでにこの体勢を解くことができなくなっていた。しかも陽子を抱きしめる自分の手もなぜかそのままに離れてくれない。


…ゴ…クッ…


まるで蛇ににらまれた蛙だった。逃げられないのは自分のほうだったのだ。豊かな胸に顔を埋めながら動けない。頭頂まで身体を密着され、この柔らかい身体に自分が包まれ埋もれていく強烈な感覚が急速に襲ってきた。

武史の瞳が焦点を失いながら拡大し、胸の中で白くなっていった。





目次へ     続く

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