第135章
正直なところ、武史自身に迷いがなかったわけではなかった。さっき執り行ったテーブル上の儀式では予想をはるかに上回る効果を得たと感じていた。いろいろ道具を取り揃えては来たもののそんなものは関係なしにテーブルを除けてからの行動は、一旦責めるのを止めるなり休むなりしてそのまま抱いてしまいたい衝動に駆られたのは確かだ。
しかしテーブルの上でしゃがんだ陽子が、排泄しながら絶頂を迎えたのもまた、一目瞭然だった。もっとこの趣旨でイカせてやりたいと思うのに充分すぎるほどの淫靡な姿だったのだ。ただ単純に抱いてしまうよりも、アナルの快感を開花させることで本当に陽子を自分のものにできると思えた。先導しているのはこっちだから初めからそれは当然自分の嗜好と一致している。自らの尺度に陽子を引き下げて(引き上げて?)やることを自分は望んでいるのだと、その恍惚の表情を見て改めて気づいた。おかしな言い方だが、精一杯のことをしてあげたかった。
実をいうと、ことが進むにつれ逆に驚いたのは武史のほうであった。淫具を挿入し浣腸を施すたびに、陽子の花弁から愛液がトロトロと内腿を伝い続けていたのである。特に最初の勢いの良い注入のとき、愛液はぷるぷると震えながら直接下方向に雫を延ばしていた。そしてさらに驚いたのはさきほどのこの言葉を発したときである。
(「…やめて…みないで…」)
そう、確かにこのときだった。声が下がり冷静に返ったと見えたとき、武史にもさすがに心の内を察した。つまり陽子が自分の置かれた状況を実感を持って再確認したそのとき、花弁はとぷっと大きい透明な固まりを排出したのである。
武史は、当の陽子自身が被虐の羞恥心を悦びに変貌させていることを確信した。思う通りに身体の制御がきかなくなっているのかもしれないが、"みないで"と言いながら愛液を噴出させるさまを見てしまっては、このまま突っ走るしかない。
たとえ変態男の欺瞞だと言われてもよかった。当の武史自身も自制が効かなくなっていることがなんとなくわかっていた。しかし続けることで、世界に離れて小さく位置していたはずの、お互いのなにかの枠みたいなものが近づいて重なっていくように思えた。その枠の重なりをさらに自分だけの領地に引き入れることができれば、自分と陽子の快感は深く共有していく。もちろん具体的にそんなことを考えていたわけではないが、ただ、無自覚ではあるがそれは武史にとって陽子がしだいに、いや以前からその場限りの弄び棄てる存在ではなくなってきていることへのひとつの表れでもあった。
「…やああっ!…もう入らないっ!…いれないでっ!…」
引き返す水流に新たな生ぬるい援軍が圧迫となって加わってくるのを感じる。
「…僕が出してあげない限りずっと増えてくよ…」
「…うあっ!…やああっ!…うあああっ!…」
量を増した溶液が再び、滝となっておなかの中へ戻っていく。そしてパニックを起こしたようにおなかは叫びながらまた再度、出口のほうへ力いっぱい波を押し返した。
「…だめっ…くぅぅぅ…だ…めっ…」
肛門は開ききって、排泄の状態からいっさい戻らないままだった。腹筋だけが動くのでやがてゆっくりとなった大きな波だけが寄せては返していた。かえってそれが中を攪拌することになるなどと思う余裕もない。陽子は自ら浣腸液を蓄えながら、自分で中をかき混ぜてしまうこととなっていた。
そして尚も量は増し続ける。漏らすのを許されず一方的に男の液は内臓を犯した。
「…だめ…です…もう…だめ…で…すぅぅ…」
すでに限界値をとうに大きく越えてしまっている。この苦しみから逃れるための"排泄"を望むことしか陽子の頭脳を占有するものはなかった。
「…ウウウーーーッ!…させてえ…出させてぇ…ウンンーーーーッ!…」
「…なにを?…」
「…ああ…う…ウウウーーーッ!…」
「…」
「…アウッ!…」
「…」
「…ウン…チ…さ…せ…て…」
言えるのはこれしかなかった。具体的には言われなくとも、いま自分が口にしなければならないのはこれしかない。猶予はなかった。
「…こないだ教えたろ…奴隷はなにをするにも、許しを乞うために精一杯のいやらしい言葉でおねだりするんだ…」
「…ウウウーーーッ!…ウン…チぃ…」