第132章
ゴム球は二つとも空気を終わりまで送り終えた。いつのまにか陽子の顔は口を開いたままになっていた。段階を踏んで開かされていく穴に、膨らみのくびれはもう収縮さえ許さない。これ以上開くことも閉じることもできなかった。力を入れてもびくとも動かない。陽子の肛門は完全に固定された。
ちょうど口を半開きに歯を見せながら唇を思い切り突き出して、そのまま壁に押し当てた状態、これがいまの陽子の肛門の姿だった。
「…これで装着完了。ぴったりといい具合に収まったね…」
「…は…あ…は…」
言葉になどならなかった。肛門を"塞がれ"て"開かされ"たのである。閉じたくても閉じられない。どうしても身体は"排泄中"の状態になってしまう。
「…あ…い…ひ…」
「…力を抜いて陽子…無理にイキむ必要はないから…」
確かにこのままでいつづけられるわけもなかった。あやすような男の言葉に陽子は身体の緊張を解いていく。震えが収まると同時に眉間の皺も緩やかになった。
「…は…はっ…はあぁ…」
リラックスしても状態は維持されたままだ。内部では結腸口が退いていっても、尻の穴はロケットエンジンの噴射口のまま置き去りにされている。
「…これで終わりじゃないんだよ…これからだ…陽子はこのままで浣腸されるんだ…」
「…ひっ…いっ…いや…やめて…」
発音はなんとか元通りになっても、浴びせられる言葉に計画の変更はなかった。
(…こん…こんな状態で…か…ん……おしり…開かれて…栓されて…かん…ちょう…)
なすがままの状態だった。状況は完全に男の支配下にある。高く尻を掲げ、晒した肛門にまさにそのために作られた淫具を深々と埋め込み、こともあろうに性的な器官でないはずのその箇所を弄ばれている。
女性として、いや人間として恥辱の最低防衛線を破壊され続けているのだ。
公衆の面前ではなく、たった一人の男性に陵辱されていることが逆に、自分自身がすべてこの男にいま支配されていることを強烈に自覚してしまう。
「…もう漏らせないよ…」
「…あ…やめ…やめて…」
…ずぅぅぅんん…
「…う…」
男がオレンジ色の握りを手にした。ただそれだけの動きが、繋がった棒を伝って陽子の粘膜を刺激する。画面には洗面器が登場し、オレンジ色のチューブの先端が沈められた。
「…やめて…おねがい…」
(…おねがい…たすけて…だれかたすけてぇ…わたし…にげられない…わたし…こんなで…いまから…かん…ちょう…)
そして握りを持つ手がピクッと動いた。
…ピュルッ…
(!!!!!!……)
「アッ!!…カッ!!!…ガッ!!!…」
ものすごい勢いの水流が穴の奥を刺激した。男が最初の一撃を、ゴム球をつぶしきらずに細かく短く噴射したのだ。
…ピュッ…ピシャッ…
「…ヒアッ!…アガッ!…」
陽子だけにこの水音が聞こえる。肛門は引き締まろうとしたがピクピクと震えるだけだった。膨らみに貼りついた粘膜がナメクジのように這おうとしても、弾力のあるピンクの皺は位置を変えずに蠢くばかりだった。そのせいで棒がわずかにひくひくと前後に動いた。
毛穴が開くほどに陽子の身体全体の感覚は穴の現況と同じく、既に剥き出しの状態で鋭敏になっている。
そんな状態で体温より少し冷めた液体が中でぴしゃぴしゃと噴射された。覚えのある感触が以前とは全然別の、いや久しぶりの場所に与えられ身体が震えた。
「…ひっ…ひぐっ…」
「…入ったのわかった?…かんじるだろ…浣腸…」
刻むのをやめ、男はゴム球をゆっくりと握りつぶしにかかった。
「…いっ…やめ…ひっ…」
…プチューーー…ちゅるちゅるちゅる…ちゅる…ぐぐ…
水流の刺激がなくなると、生ぬるいものに内側を圧迫されていくのを感じた。包んでいた粘膜がその固まりから離れていく。
…じゅるるるる…
男がゴム球の握りを緩めた。洗面器から次のための奔流を吸い込んでいく。その音が止むと再び肛内に圧迫が加えられていく。
…ぐぐ…ぐぐぐぐ…
「…あ…や…あ…あ…」
…ぐ…じゅるるるるるる…
「…は…はあああ…」
突然内圧が緩んだ。そのかわり少し冷たいものがおへその辺りまで下がってきた。浣腸液が腸の中まで侵蝕してきたのだ。男はゆっくりゆっくりと浣腸を続けた。
…ぐぐぐ…ぐぐぐ…
「…ふあ…ふ…は…あ…いれ…ない…で…」
結腸口が開いてしまったのだろう。液が肛門にとどまらず、さらに中へと直接侵入してきた。下腹の中心に冷たいものが溜まっていく。一度堰をきった水流が最初ほどの抵抗がなく入っていくようになったのが武史にもわかった。
だが4度目のゴム球を握りつぶしたそのときであった。
……ぐるるるる…
おなかが鈍い音を立てた。陽子の身体が反乱を開始したのである。
「…うっ…いやっ…」