第126章
男は、陽子の拘束をひとつづつ丁寧に解いた。陽子は既に自らを支える力を失っていた。男は股間と胸のローターをできるだけ痛くないようにはがし、抱きかかえるようにしてテーブルから陽子を解放した。
男は陽子の両手を自分の首に巻きつけてやり、背中と膝を抱えてそっと持ち上げた。陽子はその通りにするしかなかった。長い間しゃがんでいたために足が痺れて感覚を失っていたからである。
そして男はそっと陽子を足から地面に降ろした。よろけてしまう陽子を、男は腰に後ろから回した手で支えてやった。
どうしても目がそっちに行ってしまう。テーブルの上には散乱するロープと共に、陽子の小水と愛液が全面に撒き散らされていた。そしてさっきまでそこにあった皿の上にはこんもりと自分の汚塊が盛られていたのだ。持っていったときにちらと見たが、意外に思ったより多くはなかった。
しかしそのときから端にこぼれていたのか、いまだテーブルには透明ではないものがあった。
どういう状態にいま自分がいるのかわからなかった。あれを出したのは本当に自分なのか。自分は本当にいまこの上で、男が見ている前で排泄行為を行ったのか。
そしてなによりも、どうして…あれはあの感じは…気持ちよかったなんて…
「…すごいとこ見せてもらったよ…」
後ろから男が陽子を抱きしめる。尻に固い、熱いものが当たっていた。
「…見えるみたいだ…さっきの陽子が…んむっ…」
「…っ…」
男が首筋をしゃぶってきた。がむしゃらに舌を動かす。おもわず股間が閉じよろめく。合わさり目に、ローションなのか愛液なのかぬるぬるしたものにまみれてるのを感じた。
「…ら…らまらない…」
男が胸に抱きつき腰を落とした。陽子もいっしょにしゃがむしかない。背中が押されるまま陽子はベッドに手をついた。
手に支える力など残っていなかった。膝を床に着けて陽子は上半身全部をベッドに預けた。
「…ら…らめ…ら…」
ペニスが尻の分け目を前後している。うまく狙いを定められないようだ。
(…このまま…入れられ…る…)
勢いあまったために男の両手を陽子の胸が押しつぶしてしまっている。ペニスが陰唇を何度も空振りしながら滑った。そして二つの穴のちょうどあいだ、蟻の戸渡りのところを圧迫したときだった。
「…うっ…うっ…」
…ぐっ…ぐぐっ…ぐっ…
(…いれら…いれ…)
逃げようとはせずに尻がもぞと動いた。そのとき男の腕がぎゅぅっと陽子を抱きしめた。
…びちゅっ…
「…うっ!ううっ…」
(…あ…)
入れる前に男は射精してしまった。突然の予想外のことに陽子はうろたえた。
なおもペニスは行き先を探った。ぐぐっと陽子の背中が仰け反った。自然に尻が突き出た。身体がペニスを迎え入れようとしているのだ。そのおかげでペニスは中心を捕らえた。そのとき…
…チュルルゥ…
「…ゥああァァァ…」
へたるような変な声が出た。熱いものが膣中に入ってきた。精液が、入らない亀頭から膣口に密着したまま注入されたのだ。陽子の膝ががくがくと開いてさらに背中が仰け反った。
「…アア…ウア…」
押さえこまれた尻が艶かしくもがく。入ってきて欲しい。中に深く入り込んで奥底でこの熱いものを受け止めたい。
絶叫はない。部屋には二人の小さな喘ぎ声と、身体をこすり合わせる静かな音が交錯している。
「…ン…ンン…」
…ピチュ…プチュ…
中に入ったのはその一回限りだった。依然、精液は陰唇周囲に浴びせられるばかりだった。
(…ア…アァ…)
「…フン…フンン…」
陽子は尻を振ってペニスを探す。すべて自然に身体が動いていた。
(…ア…欲しい…ほし…)
「…ウフ…フンン…」
男の抱きしめる力はすでに弱まっていた。実際ペニスは萎みつつあるのだが、それでも尚、陽子は男の臍辺りに尻を押し付け、まだすぐそこにあってほしい屹立をいつまでも追い続けた。
「…ごめん…」
頭の後ろで、男が情けなさそうな声でつぶやいた。
(…や…終わ…り?…よかった…いや…)
「…ン…ンン…ンンー…」
ねだるように尻が蠢き、こすり付けていた。蠢きは、そのしばらくぶりに聴いた気のする人間の言葉によってゆっくりと治まり、むずがる陽子の声もしだいに小さくなっていった。
もちろん"よかった"というのは理性が発した形ばかりの言葉だ。実際陽子は大きな失望感を味わっていた。
内股を熱い精液がとろとろと伝い落ちる。いまにもまた腰が動き出しそうだった。